世界中に商品を届けるという点については、海上輸送ほど効果的で経済的な輸送手段はありません。国際海運会議所のデータによると、毎年110億トン近くの貨物が船によって輸送されており、海上輸送は私たちの生活に必要不可欠なものになっています。
同時に、海洋業界は毎年約9.4億トンのCO2を排出していて、世界中の温室効果ガスの約2.5 %を占めています。このため業界では、デジタル技術やエネルギー効率の高い船舶、クリーン燃料に投資をして、排出量を迅速に削減するべく懸命の努力をしています。
UPMもまた、自社の製品を世界中のお客様にお届けするために船舶輸送に頼っています。そしてUPM製品以外の多くの貨物を輸送する支援もしています。UPMの国際海上輸送と港湾業務を担当する部門として、UPMロジスティクスは、ヨーロッパで9隻を定期用船し、UPMの貨物輸送ニーズを支えてきました。
「サステナビリティに対する一貫した取り組みとして、UPMでは、当社船舶の排出量と燃料消費を削減すると同時に、エネルギー効率を改善する方法や手段を常に探し求めています」と、UPMのグローバルブレークバルク輸送のディレクターであるLauri Rikalaは述べています。
船舶輸送を「グリーン」にするための船
UPMが環境にスマートな新造LNG船7隻の操業に投資をしてきた理由が、まさにこれです。
「LNGを燃料とする新しい船舶は、現在UMPが保有している船舶よりも燃料消費が少なくなります。保有船舶を最新化することで、当社が排出量削減に取り組んでいることを示すと同時に、お客様が同様の取り組みを実施するお手伝いにもなっています」とRikalaは述べています。
新しい船舶はフィンランドから、ポーランド、スウェーデン、ドイツ、オランダ、イギリス、フランス、スペインへの定期運航を行います。南行きの貨物は概して木材になりますが、紙やパルプ、合板などのUPM製品も含まれる予定です。北行きの貨物は、UPMの様々な事業に使用される陶土や木材チップ、パルプ材になります。新船舶は毎月20回ほどの航海を行い、10万トンを超える貨物を運んで様々なお客様やサプライヤーの間を行き来します。
写真:新造LNG船はUPMの現在の保有船舶よりも燃料消費が少なくなり、これによって自動的にカーボンフットプリントも削減できます。
排出量を削減する最先端技術
新しい船舶は液化天然ガス(LNG)燃料で航行します。このような新世代の船舶は厳しい安全基準での船上運用が必要となり、LNGは色々な意味で、短期的にも長期的にも最適なソリューションであると言えます。
「主燃料としてLNG燃料を使えば、CO2排出に関する新しいルールに対応することができます。全体の排出量が削減されるほか、LNGを使うことでNOx規制を順守することにもつながります」とBore Ltd.のマスターマリナーであるTorsten Nordqvistは述べています。
また、これらの船舶はデジタル時代を念頭に設計されています。船上に搭載された最先端技術によって、排出量の監視と燃料消費の削減が叶うほか、船員は作業しやすくなり、安全性も高まります。とりわけ、船員の安全性については、UPMの定期航行ルートは往来が多いことから特に重要です。
「このような新しい技術によって、環境への意識はどのように高まっていくのか、そして船舶が環境に及ぼす影響をどのように最適かつ最小限にするのか。これこそが最も重要な変革だと私は思います。そしてそれは、船上のすべてのオペレーションで見られるようになるでしょう」とNordqvistは述べています。
今回、新たな船舶を航行することで、UPMは林業に新たな道を切り開き、環境にスマートな船舶で自社の輸送ネットワークをアップグレードした最初の企業となります。世界中の産業がビジネスモデルとバリューチェーンの脱炭素化のための新たな道を模索している今、UPMが願うことは、私たちのイニシアティブが手本となり、そしてお客様の安心につながることです。
「UPMは、自社のサプライチェーンの温室効果ガスを2030年までに30%削減することに取り組んでいます。その目標実現への取り組みの一端として、最も厳しい環境要件を満たすべく、最新の船団に投資することは非常に重要なことでした。そして、この投資を通して、お客様のバリューチェーンのカーボンフットプリント削減にも貢献できるでしょう」とRikalaは締めくくっています。
文:Sini-Maria Melanen
写真:UPM